良質なラピスラズリの見極め方
2019年5月25日 土曜日
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深い群青色に金色の斑点が輝くラピスラズリは、エジプト、シュメール、バビロニアなどの古代から、数多くの人々を魅了してきました。 ことにローマ時代の博物学者は、ラピスラズリの美しさを「星のきらめく天空の破片」と表現しています。ラピスラズリは宝石や装飾品として珍重されてきましたが、青色の顔料であるウルトラマリンの材料としても有名です。とくに『真珠の耳飾りの少女』で有名なフェルメールが、ウルトラマリンの愛用者として知られます。
しかし、市場にはそんなラピスラズリの偽物や、よく似た石が流通しているのが現状です。そこで今回は、ラピスラズリの語源や性質に加えて、ラピスラズリの見分け方を解説します。ラピスラズリの真贋を見極めるには、着色や染色が施されていないか、練り加工や張り加工がないかをチェックしましょう。
ラピスラズリの語源・性質
濃いブルーに金の斑が浮かぶラピスラズリは、複数の鉱物が溶け合ってできています。また、エジプト、シュメール、バビロニアなど多様な場所で珍重されたため、「ラピスラズリ」という名前には複数の世界にまたがる由来があります。
ラピスラズリの意味は「群青色の空の石」
ラピスラズリの「ラピス(Lapis)」は、ラテン語で「石」を意味します。しかし、「ラズリ(Lazuli)」はラテン語ではなく、かつてラピスラズリの産地であったペルシアの鉱山の名前に由来しています。このペルシア語はアラビア語をはじめとして、「群青の空の色」を意味するさまざまな言葉の語源です。つまり、ラピスラズリとは「群青色の空の石」といった意味を持っています。
ラピスラズリは複数の鉱物が溶け合ってできている
ラピスラズリは単一の組成を持つ石ではなく、藍色の部分はソーダライト(方ソーダ石)、ノゼアン(黝方石)、アウイン(藍方石)、ラズライト(青金石)などが結合してつくられています。ラピスラズリの特徴である美しい金色の斑点は、パイライト(黄鉄鉱)が点在することで生み出されます。
また、ラピスラズリは硬度がそれほど高くありません。ひっかき傷のつきやすさを測定するモース硬度は5から5.5と、水晶よりも柔らかい数値です。したがって、ラピスラズリをブレスレットやネックレスに使う際は、よりモース硬度の低いシルバーなどを間に挟むといった処理が施されます。
ラピスラズリによく似た石
ラピスラズリには見た目がよく似た鉱石がいくつかあり、ラピスラズリと同じ濃いブルーの色合いが特徴です。ラピスラズリの構成成分でもあるソーダライトや、主に顔料として使われるアズライトなどが類似品として挙げられます。
ラピスラズリの構成成分でもあるソーダライト
ソーダライトはラピスラズリの藍色の構成成分であり、ラピスラズリとよく似た色合いをしています。モース硬度もよく似ており、ラピスラズリと間違うことがあるため注意が必要です。ソーダライトは砕くとブルーの色合いを失い、白い粉末になってしまうため、顔料としては使われていません。
青色の顔料として使われるアズライト
アズライトはラピスラズリに匹敵する深い群青色の鉱石ですが、こちらはラピスラズリよりも脆いという特徴があります。モース硬度は3.5から4とアクセサリー向きではないため、主に青色の顔料として使われています。日本においては岩群青と呼ばれ、古来より日本画の絵の具として愛用されてきました。
ラピスラズリの本物と偽物との見分け方
ラピスラズリは人気の高い宝石であるため、本物らしく加工した偽物も流通しています。着色の有無や、人工的な加工を施したことを明示したケースが多いですが、偽物がラピスラズリとして販売されている可能性もあります。
着色や染色が施されていないかをチェック
ハウラウトと呼ばれる白い石に着色・染色し、ラピスラズリに見せかけるのは代表的な手口です。人口着色処理はラピスラズリに限らず、ターコイズなどほかの宝石にも使われます。ラピスラズリがあまりにも安く売られている場合は、まず店員に一度確認することが大切です。
練り加工や張り加工がないかをチェック
ラピスラズリの粉を樹脂で練り固めたものや、薄くスライスしたターコイズなどの板を張り合わせたものが、ラピスラズリとして売られていることもあります。練り加工の場合は、金色の斑点が不自然に均一でないかがチェックポイントです。張り加工の見分け方は、不自然なつなぎ目がないかに着目しましょう。
良質なラピスラズリの見極め方は人口着色や練り・張り加工の有無に注意
今回は、良質なラピスラズリの見極め方を解説してきました。ラピスラズリは「群青色の空の石」という意味を持ち、宝石や装飾品としてだけでなく、青色の顔料としても使われてきました。偽物も多く流通しているため、着色処理が施された別の石でないか、練り・張り加工がないかに注意しましょう。