ダイヤモンドのカットについて

INDEX

  1. 1. ダイヤモンドの輝きの秘密はカット
  2. 2. ダイヤモンドカットの種類
  3. 3. ラウンドブリリアントカットとは

ダイヤモンドの輝きの秘密はカット

ダイヤモンドとは、どの宝石よりも輝きを放ち、世界一美しい宝石です。
世界的にも婚約・結婚指輪といえば、ダイヤモンドという概念は定着しており、石言葉は「純真無垢」「永遠の絆」「純白」と、結婚や恋愛などを連想させる言葉がつけられています。

ダイヤモンドといえば、58面で構成されるラウンドブリリアントカットという印象が強く、大半の婚約指輪はラウンドブリリアントカットが使用されています。

しかし、ダイヤモンドは、原石の形状やクラリティー、カラット数、大きさなどによって、ラウンドブリリアントカットに限らず、様々なカットが使用されます。ダイヤモンドは様々なカット方法で最大限の美しさを表現してきました。

ダイヤモンドの特性 モース硬度と靭性

ダイヤモンドは、世界一硬い宝石として有名です。従って、メレダイヤと呼ばれる0.2ct以下の小さなダイヤモンドも、ラウンドブリリアントカットが可能で、大きさに限らず、世界一の輝きを放つことが出来ます。

しかし、ダイヤモンドの硬さについて、少し誤った認識をされている方も多いのではないのでしょうか。

鉱物の硬度は、モース硬度という硬さの基準で分かれており1〜10段階で評価され、ダイヤモンドのモース硬度は、最大値の10となります。
ですが、モース硬度とは、ひっかいた時の傷つきにくさであり、決して割れやすさの基準ではありません。

割れや欠けに対しての抵抗力を靭性と良い、ダイヤモンドの靭性は、水晶とほぼ同じ7.5になります。

エメラルドやサファイヤは靭性8なので、衝撃耐性でいうとダイヤモンドよりエメラルドやサファイヤの方が高くなります。

特にダイヤモンドの性質として、金槌などで一定方向の衝撃を加えると簡単に割れてしまします。
これは、原子同士の結合力が弱い部分に沿って割れるダイヤモンドの性質によるもので、 へきかい と言います。

従って、ダイヤモンドは、最も傷付きにくい宝石ですが、一方方向の衝撃には弱く、割れやすい宝石でもあるのです。

モース硬度 宝石名
10 ダイヤモンド
9 ルビー、サファイア
8 アレキサンドライト、トパーズ
7 エメラルド、アクアマリン
靭性 宝石名(靭性)
8 ルビー、サファイア
7.5 ダイヤモンド、水晶
6 ペリドット
5.5 エメラルド
壁開
壁開

屈折率が高く、カットで輝きが増すダイヤモンド

ダイヤモンドは屈折率は2.417(※1)と非常に高い上に、臨界角が約25度と大変狭い宝石です。ダイヤモンドの輝きは、屈折率と臨界角に直結しており、この2つを理解するとダイヤモンドの輝きの理由が分かります。

屈折率とは、簡単に言うと光が空気中からダイヤモンドに入る境目で光の屈折が起き、その屈折の大きさを示す数値です。図1は、ガラスとダイヤの屈折状況の比較になります。
臨界角とは、図2の様に、全反射が起きる角度です。ガラスが42度に比べダイヤモンドは25度と全反射が起きやすい性質をもっています。

屈折率が高く全反射が起きやすい性質があると、光が内部で鋭く反射し、光の入射角度により七色の輝きを放ちます

図3では上面から光が入り、ダイヤ内部で、全反射がおき、光が上部に返ってきているのが分かります。図4は、臨界角が高い宝石を例に上げており、光が上部から入り、横で屈折がおき、上面に光が返って来ていないことが確認出来ます。

この輝きの特性を、ダイヤモンド加工で有名なベルギーのトルコウスキー家の宝石職人が、数学的に光学的特性を最大限活かしたカット方法がラウンドブリリアントカットになります。

※1.ダイヤモンドの屈折率について、2.417や、2.418、2.419など記事に依って様々な記載がありますが、中央宝石研究所の「宝石ガイドブック」には2.417と記載されています。

宝石名 屈折率
ガラス 1.4585
アクアマリン・エメラルド 1.577〜1.583
ルビー・サファイヤ 1.762〜1.770
ダイヤモンド 2.417
屈折率
屈折率(図1)
臨界角
臨界角(図2)
臨界角が低いダイヤ
臨界角が低いダイヤ(図3)
臨界角が高い宝石
臨界角が高い宝石(図4)

ダイヤモンドカットの種類

ラウンドブリリアントカット

ラウンドブリリアントカットのイラスト
ラウンドブリリアントカットのダイヤリング

ラウンドとは、上面から見た時に丸い形のカットを指し、ブリリアントカットとは、クラウンとパビリオンを持つカットを指します。

ブリリアントカットは、この他にもペアシェイプカット・マーキスカット・クッションカットなども含まれます。

ラウンドブリリアントカットは初めて20世紀に編み出された比較的新しいカット方法で、現在、最も人気の高い、強い輝きを引き出すカットです。クラウン32面、パビリオン24面、テーブル、キューレットの合計58面に研磨します。

特に、2.0ctサイズが最も輝きとの調和が最適だと言われています。

ペアシェイプカット

ペアシェイプのイラスト
ペアシェイプのダイヤネックレス

ラウンドブリリアントカットの変形型で、58面でカットされます。名前の由来は、西洋梨(ペア)のような形をしている事から名付けられました。他にも、涙の雫を連想させる形であるため、ティアドロップカットとも呼ばれています。

ペアシェイプカットはカラット数より見た目が大事です。縦幅が同じペアシェイプカットのダイヤモンドでも、横幅が大きければ価格は倍以上になります。
従って、ペアシェイプカットのダイヤモンドを購入する際は、細身で大きく見える物を選ぶのが得策だと言えます。

マーキスカット

マーキスカットのイラスト
マーキスカットのダイヤリング

58面、もしくは18面でカットされ、舟の形をしています。名前の由来は、18世紀フランスで有名なファッションリーダー、ポンパドゥール夫人が侯爵(マーキス)の称号を貰った時代に流行った宝石のカット方法ということで名付けられました。

現在でも大変人気なカットで、どんなジュエリーでも美しく大変人気なカットになります。

特に、マーキスカットは、縦横比2:1の比率が最も美しいとされています。

クッションシェイプカット

クッションシェイプカットのイラスト
クッションシェイプカットのダイヤリング

クッションシェイプカットは、丸みを帯びたクッションの形から名付けられました。

18世紀に確立したブリリアントカット(クラウンとパビリオンを持つカット)がクッションシェイプでした。

もともと、クッションシェイプは、可能な限りダイヤモンドの大きさが変わらないように、原石の形に沿って研磨するためのカット方法でした。その概念が定着していたため、2世紀ほどの長い期間、ダイヤモンドの主流カットとして使用されていました。

現在でも、クッションシェイプカットのダイヤモンドジュエリーは少なくなく、エンゲージリングとしても人気があるカットになります。

ハートシェイプカット

ハートシェイプカットのイラスト
ハートシェイプカットのダイヤリング

ハートシェイプは名前の通り、ハート型のカット方法です。ラウンドブリリアントカットの変形型で58面にカットされます。

輪郭は手作業で研磨するため、研磨工の技量によって美しさは左右されます。特にハートシェイプは、正方形内に収まる形が良いとされています。

エメラルドカット

エメラルドカットのイラスト
エメラルドのダイヤリング

名前の通り、エメラルドに非常に多く研磨されるカット方法です。エメラルドカットの美しさは、透明度と姿の良さです。
だからこそ、エメラルドカットは、素材の欠点を隠すことの出来ないカットと言われています。

先人たちが、大粒で無色の透明度の高いダイヤモンドを、エメラルドカットに仕上げてきた結果、今日のオークションに出品される10ct以上の高品質ダイヤモンドの多くがエメラルドカットです。

バゲットカット

バゲットカットのイラスト
バゲットカットのダイヤリング

バゲットカットは長方形のステップカットで、名前の由来は、を意味するフランス語からきています。

長方形のため、大粒のダイヤモンドは、角が欠けるリスクがあるため、エメラルドカットに研磨されることが多く、ほとんどのバゲットカットは小粒になります。

バゲットカットは、複数並べてジュエリーの装飾として使用される事が多いカットです。

プリンセスカット

プリンセスカットのイラスト
プリンセスカットのダイヤネックレス

プリンセスカットは、正方形でありながら、ブリリアントの輝きを融合させたカットです。

1961年ロンドンの研磨工のアルパド・ネギーが考案したカット方法で、メジャーなカット方法の中でも新しいカット方法で、プリンセスカットと命名し1970年に商品化され、全世界に広まりました。

プリンセスカットというネーミングはダイヤを購入するターゲットに的確に刺さり、人気を上げる要因ともなりました。

ただし、プリンセスカットは難点があり、正方形なので、角が欠けやすいのが難点になります。

ブリオレットカット

ブリオレットカットのイラスト
ブリオレットカットのダイヤネックレス

ブリオレットカットはドロップ型で、ミラーボールのようなきらめきを放ちます。

多くは、吊り下げて、ネックレスやイヤリングとして使うことが多いカット方法です。

長手でふくらみがあり、透明度の高い原石を使用するため、ブリオレットカットのダイヤモンドは、大変貴重なジュエリーになります。

ラウンドブリリアントカットとは

カットグレード(評価)は形と仕上げの評価

ダイヤモンドの国際基準4Cの項目、カット(プロポーション)は、形と仕上げの評価になります。
そして、ダイヤモンドの美しさ・輝きの要素であるブライトネス(白色光)、ファイヤー(虹色)、シンチレーション(煌めき)は、カットにより引き出されます。理想的なカットに近いほど、ダイヤモンドの輝きも増します。

カットグレードは、ラウンドブリリアントカットのみ

ダイヤモンドは、数多くのカットが用いられますが、4Cのカット評価については、ラウンドブリリアントカットの場合のみ、なされる評価であり、ラウンドブリリアントカット以外のカットはグレーディングされません。
従って、鑑定書(グレーディングレポート)のカット項目には、ラウンドブリリアントカットのみ記載されます。

カットグレード表

カットグレードは、5段階評価に分かれており、更に最高グレードであるExcellentは、3段階に分かれます。

カットグレード表

カット名称

ラウンドブリリアントカットのカット面は、合計58面と7つの名称があります。

クラウン側の名称と面の数
パビリオン側の名称と面の数
クラウン側
カット名称 カット数
(合計33面)
スターファセット 8面
テーブル 1面
ベゼルファセット 8面
アッパーガードルファセット 16面
パビリオン側
カット名称 カット数
(合計25面)
ローワーガードルファセット 16面
パビリオンメインファセット 8面
キューレット 1面

3EXと呼ばれる「プロポーション」「シンメトリー」「ポリッシュ」について

ダイヤカットのプロポーション(形のバランス)

パビリオンの高さ

図1は、カット面の角度や割合を、パーセンテージにした理想のプロポーションです。理想のプロポーションに近ければExcellent、遠ければPoorとグレードが決まります。鑑定書には、このカット面の角度や割合が記載されます。鑑定書をお持ちの方は、図1と見比べて見てください。

下図は、クラウン側(テーブル面)から見た影の見え方を表した図です。理想的なプロポーションの場合、影と同等の円がガードルに向けて2つ程入る大きさが一つの指標になります。

この影の大きさを覚えておくと、リングに留められているダイヤモンドでも、プロポーションが確認出来ます。

パーセント表示した理想のダイヤプロポーション
理想のプロポーション(図1)
パビリオンの高さに依って変わる影の見え方
適切な高さであるパビリオンの影
浅い高さであるパビリオンの影
深い高さであるパビリオンの影

ガードルの厚さ

ガードルには適切な厚さというものが存在し、厚すぎたり薄すぎたりするものは、理想のプロポーションとは言えません。また、図2のようにガードルの厚さが平行じゃないものはカットグレードを下げる要因にもなりますので注意して観察しましょう。

下のガードルの厚さ一覧表は、ガードル径の直径を100%とした時のvalley(※1)とhill(※2)の厚さをパーセンテージで記載した一覧表です。しかし、ガードルは不規則の場合もあるため、最終判断は、目測で行います。

そして、鑑定書には、パーセンテージではなく、理想の厚さは「medium」、少し厚ければ「SlightlyThick」など、英単語で記載されます。

※1.「valley(谷)」とは、ガードル面の中で1番薄い部分の事の事を指します。(参照:図3)

※2.「hill(丘)」は、厚い部分の事を指します。(参照:図3)

ガードルの厚さ一覧表

番号 鑑定書記載 厚さ valley hill
- ExtremelyThin 極端に薄い - -
- VeryThin とても薄い - -
Thin 薄い 1.2% 2.9%
Medium 理想 1.8% 3.5%
SlightlyThick やや厚い 2.5% 4.2%
Thick 厚い 3.5% 5.2%
VeryThick とても厚い 5.0% 6.7%
ExtremelyThick 極端に厚い 7.5% 9.2%
平行ではないガードル
平行ではないガードル(図2)
valleyとhillを表したイラスト
valleyとhill(図3)
ガードルの厚さに対しての指標
薄い・理想・やや厚いを表したガードルのイラスト
厚い・とても厚い・極端に厚いを表したガードルのイラスト

カットのズレ

宝石は、ファセット(カット面)同士の隣接部分にズレが生じてるものがあり、全てのファセットの隣接部分に生じる可能性があります。
図3の様なズレ方は、カットグレードを下げる要因となります。

カットのズレは、過剰な研磨不適当な角度の研磨適切なカット順序ではない場合などが要因でおきます。カットのズレは、10倍ルーペで確認が出来ますので注意深く観察しましょう。

カットのズレ
カットのズレ(図3)

ダイヤカットのシンメトリー(対称性)

シンメトリーとは、対称性を意味し、各ファセットの位置が対称的でその形が正確であるかを評価します。図4では、テーブル面の半分の幅と、スターファセット・アッパーガードルファセットを合わせた幅が等しいので、評価が高いと分かります。更には、スターファセットの幅とアッパーガードルファセットの幅が等しいことも評価が高くなる要因となります。

図5は、アッパーガードルファセットとローワーガードルファセットの配列が対称の場合、バランスの取れたプロポーションといえます。逆に、配列のズレはツイストと呼ばれ、適正なプロポーションではありません。

次に、下のよくある非対称のプロポーション例を御覧ください。 図Aの円形不良は、クラウン側、もしくはパビリオン側から見た時にダイヤモンドの形が真円ではなく楕円になっていることが分かります。

図Bは、ダイヤモンドを横から見たときにテーブル面が地面と平行ではありません

図Cのオフセンターテーブルは、クラウン側(テーブル面)から見た時に全体的にカット面が中心からズレている事が分かります。

また、図Dのオフセンターキューレットは、パビリオン側から見た時にキューレットの位置が中心からズレているので、カットグレーディング(評価)を下げる要因になります。併せて確認するようにしましょう。

よくある非対称のプロポーション例
円形不良・テーブルとガードルが変更ではない・オフセンターテーブル・オフセンターキューレットのイラスト
クラウンのファセット比率
クラウンのファセット比率(図4)
ガードルファセットの対称性
ガードルファセットの対称性(図5)

ダイヤカットのポリッシュ(表面の研磨状態)

ポリッシュは10倍ルーペでファセットを見たときの傷や不均一な質感などを評価します。

ファセットエッジの傷の「摩耗」、研磨などの熱で入る曇りを「バーン」、表面に入った傷の「スクラッチ」、白い「ピット」などは評価を下げる要因になりますのでご注意ください。

摩耗
摩耗
バーン
バーン
スクラッチ
スクラッチ
ピット
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